設立15年目を迎えて、もう一つ私が思う事がある。
それは太極拳の価値を高めていきたいという事だ。
私が太極拳を学び始めたのは、もう20年以上前になる。その頃と比べれば、地方でも随分と太極拳の教室が増えているようだ。
実際、私達が活動しているどの施設でも大体3~4団体は活動しているようで、【太極拳の普及】という点では、大変喜ばしく思う。
ただし、残念に思う事も二つある。
一つは、未だに太極拳と言えば、「年配者向けの健康体操」もしくは「中国式ラジオ体操」といったイメージを拭いきれていないという事だ。
もちろん、年配者向けの健康法としての太極拳も素晴らしいと思うが、私としては、ぜひ若い方にも学んでほしいと思うし、やはり本格的に始めるなら若い頃から始めたほうが絶対に良いと思う。
そのためには、我々も若い方達に知ってもらえるような努力が今後も必要となってくるだろう。
もう一つは、タイトルにあるように、「太極拳の価値を高めていきたい」という事である。
長く続いたデフレ経済のせいか、大手団体が競合して支部を乱立したせいなのか分からないが、太極拳の教室の月謝があまりにも安くなり過ぎているように感じる。
私の住んでいる地方でも数年前までは3~5千円のところが多かったように思うが、現在では1千円とか、ひどいところではワンコイン太極拳(500円)でやっているところもあるようだ。
1回のお試しという事なら、まだ理解できるが、さすがに一ヶ月の月謝となると、「あぁ、世間では、これ位の価値と思われているのだな。」と残念に思う。
確かに【太極拳に触れあう機会を作る】という点では、良いのかもしれないし、各団体で各々事情もあるのだろうが、さすがにここまで価値を下げてしまうのは、どうだろう。
そのうち、太極拳は無料で習えるもの、あるいはボランティアで教えるものになっていくのかもしれない。
私が懸念しているのは、次の世代の人間達が、果たしてそれで夢を持つ事ができるだろうかという点である。
将来、「これ一本で食べていきたい。」とか「道場を持ちたい!」いう若者が出てきても、今の時代の人達がここまで価値を下げてしまっては、現実的には難しいだろう。
実際、一昨年前に帰国された鄭志鴻老師は、どんなに生活が苦しくとも、会費を下げる事はなかった。やはり自分が学んだものに対しての価値は下げたくなかったのだろう。
馬貴派八卦掌の李老師も考え方は、まったく同じである。
中国人の老師方が頑張っているのに、我々日本人がどんどん価値を下げてしまっているのは、非常に情けなく思う。
もちろん、その世代の人達で、それなりに努力はしていくと思うが、せめて我々の世代で、それなりに夢が持てる物として、次世代に残して行ければと思う。
今後の当会の目標は、やはり太極拳の価値を実質ともに高めていきたいという事で、一つは武道としての実用性を高めていきたいと思う。
というのも、当会に入門される方の多くは、女性も含めて、やはり太極拳の武道性に魅かれてという方が多いようだ。
また健康目的で始めた方も、長年続けているうちに、何らかの武道性を感じて続けてらっしゃるように思う。
これまでは、色々と誓約もあり、公開できない事も多かったが、長く続けてらっしゃる方には、これまで学んできた事の意味についても、少しづつ紐を解いていきたいと思う。
前回の記事で紹介したN先生は、50代の頃に一度教室を開いた事があるらしいが、自分の学んだ太極拳と一般の方の認識があまりに違い、一年余りで教室を閉じてしまったそうだ。
職人気質の先生だったし、妥協してまで人に伝える必要性を感じなかったのだろう。
N先生をはじめ、私が学んできたものを、一般の方にも習得できるように指導していく事が、私自身の課題となっていくのかもしれない。
そのためには、指導体系をいま一度整備していく必要がありそうだ。
また健康法としても、質の高い動きを追求して、「太極拳って、すごい!」と思われるように努力していきたい。
実際には、当会だけの努力など微々たるものかもしれないが、それでも一つの目標として活動していきたいと思う。
かといって、急に指導が厳しくなる訳ではないので、ご安心下さい(^-^)
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